ミッドライフクライシスは本当にあるのか?「不幸せの山は49歳」説と研究者たちの論争を追ってみた

個人的な事ではあるが、正直、40代が一番しんどかった。
40〜50代は人生の転換期とよく言われる。でも私にとっての40代は、転換期というよりも、父親、仕事、夫としての責務が、それぞれ最大化する時期だったように思う。
そんな実感を抱えたまま、ミッドライフクライシスをめぐる研究を追ってみた。
不幸せの山は49歳?
不幸だと感じる度合いは、年齢とともに山のような形を描き、その頂点は平均で49歳。
経済学者のデービッド・ブランチフラワーが、そう報告している。
しかし、中年で落ち込むという曲線そのものに、異を唱える研究グループもある。
年齢の違う人を一度に比べる調査でも、同じ人を何年も追いかけた調査でも、結果はまちまちで、思われているほど確かなものではないそうだ。
高齢者に人生を振り返ってもらうと、中年期はむしろ良い時期の一つとして思い出される傾向もあるらしい。
これにブランチフラワーらは反論した。
同じ傾向を示す研究は、見落とされているだけで353本もある。落ち込みの底は40代半ばだ、と。
40代半ば。私が一番しんどかった40代だ。
研究者の多くは「神話」と言うけれど
米国心理学会の心理学辞典には、多くの研究者がミッドライフクライシスを神話だと考えている、と書かれている。
ラックマンという中年期の研究者も、論文の中で、危機を感じやすいかどうかは、年齢よりも神経症的な性格と関係しているかもしれない、という指摘を紹介している。
「中年には危機が付きもの」と思い込むと、本当にそうなってしまう事がある。悪い行いの言い訳にもされかねない。そんな注意も書かれていた。
でも私は、神話ではないと思う。
私自身が強く感じたし、周りの同世代を見ていても、そう見えるからだ。
35歳にリアリティはあったのか
ミッドライフクライシスという呼び名を広めたのは、精神分析家のエリオット・ジャックスだ。
医学史の論文によると、ジャックスがこのテーマを考え始めたのは1952年、35歳の時。ダンテの『神曲』地獄篇を、中年の闇と抑うつへの旅として読んだ事が、きっかけの一つだったという。
1957年に学会で発表したものの、反応は乏しかった。
論文になったのは、その8年後。芸術家300人の調査と、自身の臨床の事例がもとになっている。
その後、1970年代には多くの研究や本に受け継がれ、広く使われるようになった。
ただ、35歳だ。
35歳では正直、リアリティを感じ取れていたのだろうか。
私が一番しんどかった40代を、まだ迎えていない年齢だ。
しかし、やはり私は、ミッドライフクライシスは神話ではないと思う。




